勤務校で第27回法文化学会が開催されました。同会の冒頭、開催校を代表してご挨拶させていただきました。なお、大会テーマは「道徳感情の法文化(Legal Culture of Moral Sentiments)」というものでした。

開催校を代表してのご挨拶

 熊本大学法学部長の大日方でございます。2025年度法文化学会の開会にあたり、開催校を代表いたしまして、一言、ご挨拶いたします。

 本日みなさまにお越しいただきました熊本大学の歴史は古く、法学部・文学部・理学部の母体となっている旧制第五高等学校は明治20年(1887年)の第五高等中学校からはじまります。医学部の母体となっている再春館と薬学部の母体となっている蕃滋園はもっと古く、宝暦年間の1756年に設置されています。戦後、熊本大学が設置されたときには法文学部としてスタートしましたが、1979年(元号でいうと昭和54年)に、法と文が分離して法学部単体となり、本年で、46年目を迎えております。この間、多くの国立大学では郊外移転がなされていると聞いておりますが、本学は、旧制高等学校設置以来、この地に存在していることが自慢のひとつでございます。2016年(平成28年)の熊本地震で被災した五高記念館もすでに復旧がなされ、夏目漱石や、いま「ばけばけ」で話題のラフカディオ・ハーンが教鞭をとった教室等がご覧いただけますので、どうやら、本日は休館日のようですが、あすは開いているようですので、学会終了後、ご帰宅の際にでもお立ち寄りいただければと思います。

 ところで、大学運営、とくに、大学経営をとりまく状況(こういう「〇〇をとりまく状況」のことを、そう新しい言葉でもないと思いますが、最近の若者は「かいわい」というようです。これにならうと)「大学界隈」はいろいろな問題があり、それをうけ、この学会の控室とさせていただいている教室も熊本トヨタ様にネーミングライトをご購入いただいて「くまトヨ講義室」と名づけていただいております。お車の変え替えをご検討の際には、是非、よろしくお願いいたします。ただ、大学界隈の状況がいかようになろうとも、大学はやはり研究して、それをもとに教育して、研究成果・育成した人材を世に出していくということが基本的な使命であり、それが大学が第一にすべき社会貢献でもあると考えております。その関係で、今回は、場所の提供、遠路はるばるの方もおられるかと思いますが、熊本大学をこうした学会の会場としてご利用いただけたことは、大学にとっても、有難いことと存じます。ちなみに、理系では研究室の提供だけでも研究業績になり得るようです。その意味で、今回の法文化学会の開催は、熊本大学法学部の研究業績としてもカウントさせていただきたいと思います。

 さいごに、きょう・あすの学会テーマは「道徳感情の法文化」とのこと。道徳感情とは、人が善悪や公正・不公正を感じ取る情緒的な反応のことでしょうか。また、法文化とは、人びとの法に対する考え方・態度のことかと思います。そうすうと、道徳感情が法文化を形成することもあれば、逆に、法文化が道徳感情に影響を与えている点もあるのかと思います。こうした抽象概念を具体の問題に落とし込んだ研究報告がなされることと存じます。開催校を代表するものですが、わたしとしても勉強の機会として、本会の開催を心待ちにしておりました。このことをお伝えして、開催校のご挨拶とさせていただきます。本会の成功をお祈りいたします。