本年度最後の教授会があった3月19日(木)の夜、本年度末で勤務校を退職する3名の先生の送別会をしました。

3名のうち、2名は定年退職、1名はご栄転での退職です。お役目として、開会にあたってそれぞれの先生をご紹介(いまさら)させていただきました。

そのうち、退職される2名の先生については、勤務校の論文集『熊本法学』で退職記念号を刊行しています。2名の先生のご紹介はこの論文集の巻頭に掲載していただいた「献呈のことば」をもとに、お話させていただきましたので、ここにそれを掲載させていただきます。

献呈のことば

 令和3(2026)年3月31日をもって、熊本大学法学会会員である大澤博明教授と伊藤洋典教授が、熊本大学大学院人文社会科学研究部を定年退職されます。お二人は、長年にわたり本学の教育と研究の充実発展に尽力され、そのご功績は大きなものがあります。そこで、熊本大学法学会は、長年にわたる先生方のご貢献に対する感謝の気持ちを表すために、ここに退職記念号を刊行し、惜別の念を込めて献呈することにいたします。

 大澤博明先生は、1983年3月に熊本大学法学部を卒業し、1985年に同大学院法学研究科修士課程を修了されております。本学の同窓生です。その後、大阪市立大学院法学研究科後期博士課程に進学後、1989年3月に同課程を単位取得退学されております。本学には、1989年の東京大学社会科学研究所を経て、1992年4月に助教授法学部として赴任されております。2001年1月には教授に昇任されております(2017年に法学系教員の所属が一元化されたことに伴い、現在の大学院人文社会科学研究部の教授として配置換されています)。学部内でさまざまな管理運営業務に従事されたあと、2007年に教育研究評議会評議員、翌2008年には法学部副学部長になられております。その後、2022年3月までの間に都合9年間、副学部長を務めておわれます。2008年度から3年かけての文法学部本館の耐震補強改修の際には、陣頭指揮をとられていたお姿を、いまでもよく覚えております。まさに法学部をお支えいただきました。

 日本政治外交史をご専門とする大澤先生は、とくに、近代日本の東アジア政策、日清戦争、近代日本の政軍関係について、ご研究されております。大澤先生の大量の資料と歴史的事実に基づく歴史学的な分析は、単なる事件の整理にとどまることのなく、当時の国際関係や政治思想を深く読み説く学術性の高い業績へとつながっております。とくに、明治陸軍の参謀総長・井上操六、軍人であり政治家でもあった児玉源三郎については、顕著なご業績があります。

 ところで、大澤先生の常に学問に真摯に向き合うそのお姿は、本学の古の学徒・龍南健児そのものであったと思います。また、寡黙ながらもときに羽目を外されるあたりも、古の五高生を彷彿とされるものでした。冷静沈着に業務を遂行されるところは、法学部のアンカーであったと思います。

 伊藤洋典先生は、1985年に九州大学法学部を卒業、1988年に同大学院法学研究科修士課程を修了されたあと、そのまま同大学院博士課程進まれ、1991年3月に同課程を単位取得退学されております。その後、1991年4月に九州大学法学部助手、1993年4月に日本学術振興会特別研究員に就任され(この間に九州大学から博士(法学)の学位を授与されております)、本学には1994年4月に赴任されております。当初は教養部に助教授として所属されておりましたが、1997年4月に法学部に配置換えのあと、2001年1月に教授に昇任されております(2017年に法学系教員の所属が一元化されたことに伴い、現在の大学院人文社会科学研究部の教授として配置換されています)。学部内のさまざまな管理運営業務に従事されたあと、2013年に大学院社会文化科学研究科の副研究科長を経て、2015年には同研究科の研究科長に就任されております。また、2019年の学長特別補佐(国際担当)を経て、2021年には熊本大学副学長に就任されました。部局のトップおよび大学の執行部を歴任されております。

 伊藤先生は、政治思想史、とくに20世紀の政治思想、なかでもドイツ系ユダヤ人であるハンナ・アレントのご研究をされております。アレントは全体主義や公共空間と個人の関係について深く考察した政治思想家だと理解しておりますが、その思想を通じて伊藤先生は現代の政治と社会の構造を考えてこられました。また、近年では地方議会の役割・動向に関するご研究もあり、さらに、熊本の小説家であり詩人であり環境運動にも取り組んだ石牟礼道子の思想にも造詣がおありです。

 ところで、伊藤先生のご活躍は大学内にとどまりません。新聞・テレビ等のマスメディアにも頻繁に登場され、熊本における政治のオピニオン・リーダーであり続けられています。ときに「あれっ」と思われることがあっても、温かく見守られていたのは、先生の温厚なご性格のなせる業かと思います。

 このように大澤博明先生は赴任以来実に34年間、伊藤洋典先生は32年間という長年にわたって本学の教育と研究に従事され、さらには大学運営や社会貢献活動等においても大きな足跡を残してこられました。とくに豊富な経験と見識を持たれた二人の政治学の教授の退職は、法学部・大学院にとって多大な損失です。先生方におかれましては、今後とも本学を見守っていただきますとともに、益々ご壮健で過ごされることをお祈りし、これまでのご貢献に対して法学会を代表いたしまして心から御礼申し上げます。

   熊本大学法学会会長 大日方信春

 このご時世、いま定年退職できることは、わたしにとって「あこがれ」です。ただ、功成り名をあげられているからこその「解放感」だと思います。いまのわたしは「サボりたい」だけ。わたしにはまだまだ許されていないことだと思います。

 また、勤務校を替えることも、わたしにとって「あこがれ」です。いまの勤務校の何が悪いわけではありませんが、やはり心機一転してもうひと旗あげたいわたしにとって、物理的な異動はその機会を得るものだと思うので。心機一転は気持ちの問題なので、異動しなくてもできるわけですが・・・なかなかそうはいきませんよね(人間だもの)。

 いずれにしても、3名の先生のますますのご健勝をお祈りもうしあげます。