令和4年(2022年)4月4日、熊本大学では入学式が実施されました。そのあと、本来なら法学部独自に「入部式」を実施するのですが、まだコロナ禍ということで、法学部では入部式を省略することにしました。

そこで、昨年同様、新入生ガイダンスの冒頭で学部長の挨拶をさせてもらいました。

これも感染対策ということで、新入生を2部屋にわけて、その間をオンラインでつないで実施しています。

学部長の挨拶

 あらためまして、皆さん、熊本大学法学部合格、おめでとうございます。そして、こうして入学していただき、ありがとうございます。あっぱれ、でございます。なんて、わたしはA.B.C-Zさんとは違いフリー素材ですので、SNS、OKです。

 この場をお借りして、法学部を代表いたしまして、一言、ご挨拶もうしあげます。

 皆さんが入学した熊本大学法学部のはじまりは、明治20年(1887年)に設置された第五中学校、それを引継ぎ明治27年(1894年)に設置された第五高等学校にまで遡ります。いまから130年以上前のことです。太平洋戦争後、新制大学としての熊本大学が設置されたときは、法文学部として開設されましたが、昭和54年(1979年)の改組により、法学部が単独の学部として設置されました。本年が2022年ですから、43年前ということになります。

 皆さんがこうした伝統ある熊本大学法学部の一員となったことに、まずはお祝い申し上げます。おめでとうございます。

 このような伝統をもつ熊本大学法学部ですが、もちろん、その教育課程・カリキュラムは、時代や社会の要請に沿うように改革をしてきております。かつては2学科制を布いていたのですが、平成16年度(2004年度)より、法学部は法学科1学科制になっております。

 ただ、法学科の中に現在は「法学・公共政策学コース」と「アドバンスト・リーダー・コース」の2つのコースを設けております。そして、この「アドバンスト・リーダー・コース」は、略称「ALC」と呼ばれ、その中に「法学特修クラス」「地域公共人材クラス」「グローバルリーダー・クラス」の3クラスを設置しております(この内容はこのあとのガイダンスでお話しがあると思います)。こうした1学科2コース、そしてALCの中に3クラスというカリキュラム改革をしたのが平成30年度(2018年度)です。本年度(令和4年度、2022年度)は、ちょうどこうした直近のカリキュラム改革をしてから丸4年が経った5年目にあたり、カリキュラムとして定着したところにみなさま新入生を迎えることができました。

 ところで、みなさんは「法曹コース」という制度をご存じですか。これは将来の法曹(法曹というのは裁判官・検察官・弁護士のことですが、これら)を法学部と法科大学院で連携して育てるためにそれぞれの教育内容を摺り合わせることで協定を結び、法学部4年ないしできれば3年、法科大学院2年の最短で5年間で、法曹を養成するというものです。本学では「法曹プログラム」と呼んでいるこの制度ですが、昨年度の3年生の5名がこの制度による早期卒業制度を利用して、学部を3年間で卒業し、本学が法曹養成連携協定を結んでいる法科大学院に進学しています。本年度の3年生の中にもこの制度の利用を希望する者がおりますし、おそらく、みなさんの中にも5名を超えて、3年間でこの法学部を卒業する者が出ると思います。すごいですね。

 ただ、その反面で、法学部は2年生から3年生に進級する際に一定の単位数を取得していないと留年するという制度をとっています。昨年度の2年生のうち、本年度3年生になれなかった者、つまり留年した者の比率(留年率ですが、それは)13.4%です。多いでしょうか、少ないでしょうか。実際の入学者は若干多いのですが、法学部定員は210名ですから、そのうちの13%くらいというと28名くらいになります。みなさんのうち、少なく見積もって25名くらいは、4年間で卒業できないという統計データがあります。怖いですね。

 もっとも、留年というのは一般的には悪いイメージがありますが、必ずしもそうとばかりはいえません。留学したとか、何か没頭するものができた・できてしまった、というようなポジティブな留年もあるようです。また、休むことが必要になったとき、思い切って休むことも、長い人生においては重要だと思います。

 ここで言いたいのは、早期卒業するにしろ、留年するにしろ、それはみなさん次第である、ということです。みなさんは、いま、まっさらなスタートラインにいます。出身地がどこであるかとか、高校がどこだったかとか、関係ありません。入試が推薦であったか一般入試であったか、第1志望であったかどうかとか、やっぱり関係ありません。性別、現役・浪人、もちろん関係ありません。これからの大学生活を皆さんはいかようにも送ることができます。大いに希望を抱いて、是非、勇気を持って、何事にもチャレンジしてほしいと思います。

 ただ、これだけは自覚してほしいことがあります。2020年の文部科学省による学校基本調査によると、わが国に大学は786校あるようです。そのうち、国立大学は86校あります。国立大学には運営費交付金という税金が投入されています。また、その国立86校のうち、「法学部」という学部をもつ大学は14校、九州では2校しかありません。法学という学問を修めた人は卒業後社会に出て組織の背骨になることが期待されている人材です。国は皆さんに国費を投入して、社会の背骨になる人物を養成しようとしているのです。そのことをよく理解し、プライドを持つと共に決して驕ることなく、与えられた環境を十分活かして、世の中を良くしていけるような人物になるようにしてください。熊本大学法学部に合格できたということは、公正で開かれた社会を築くことの手助けができる、そういう人材になれるはずであると、皆さんには期待が寄せられています。このことだけは自覚してください。

 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症の影響がまだ治まらない中での入学となり、さまざまな不安、不都合があると思います。その中で、頑張ることも重要ですが、人を頼ることも重要です。皆さんは心身共に健康でさえいられれば、きっとうまくいく能力を持っています。健康、安全第一です。すこしでも心配なこと、不安なことがあれば、友だち、先輩、教員、誰でもいいので、話しをしてください。また、誰かが困っているようなら、声を掛けてあげてください。誰かを頼りにすることができる、そして、誰かに声を掛けてあげることができる、そういう一人一人が集まって熊大法学部ができています。このことをお伝えして、新入生へのお祝いの言葉としたいと思います。

 熊本大学法学部へようこそ。わたしのお話しはこれで終わりです。

 令和4年(2022年)4月4日  熊本大学法学部長 大日方信春

2022.04.04 新入生ガイダンスでの挨拶