当代学生事情 『一筆』第4回 紙面画像

 

 私が学生だった30年前と比べて、近ごろの大学や学生気質は随分と変わったな、というのが実感です。
 文系では、昔は大教室で100人を超える学生に講義するスタイルが主流で、「マスプロ教育」と椰楡されたものでした。今は多くの大学が、1年次から少人数のゼミに所属させて担当教員が指導するようにしています。熊本大法学部にも1年次に必修の演習科目があり、私はこの機会に大学での勉強の仕方や教科の履修方法を学生にアドバイスしています。親元を離れた学生の生活相談にのることもあります。

 学食の風景も様変わりしました。1人暮らしのわが子の食生活は、親御さんにとって心配の種なのでしょう。熊本大学生協が発行する学食の年間定期券が人気です。前払い制で毎日最大1200円まで利用でき、「3食全て学食」というヘビーユーザーも。実家に利用明細が届くので親は栄養バランスを把握でき、学生には仕送りが底をついても食事にはありつけるメリットがあるようです。
 親子の結び付きの深さが垣間見えるエピソードですが、熊本大生の最近の地元就職志向もその表れでしょうか。近年、学生から「親に何か起きた時のために、就職はできれば実家の近く」という声をよく聞くようになりました。心の優しさはイマドキの若者だなあと感心しつつ、少し複雑な思いです。親御さんと同世代の私としては、「身の丈は自分で決めず、もっと殻を破っていい。将来の日本を背負うのは君たちだ」とエールを送りたいものです。