ゼミ生「ロス」 『一筆』第十二回 紙面画像

 

 熊本大学で昨日、卒業式がありました。新型コロナの感染予防で「密」を避けるため、代表者のみが出席する形式でした。私の憲法ゼミからは今春、25人が巣立ちます。今回は社会へと旅立つ彼、彼女たちの声を紹介します。

 民間企業に就職する女子学生は「職場の皆さんの戦力になれるよう、なるべく早く仕事を覚えたい」と抱負を語りました。ただ「九州を離れるので、身近に頼れる人がいなくなるのは心配」とも。いつの時代も、住み慣れない土地での新社会人生活は希望と不安が同居するのでしょう。
 公務員になる女子学生は「大学で学んだ法律と知識を生かし、市民に寄り添える職員になりたい」といいます。別の男子学生は「毎日コッコツ勉強を槙み重ねて司法試験に一発合格し、性差別撤廃を手掛ける弁護士になりたい」と夢を語ってくれました。
 ただ、希望ばかりでもありません。ある女子学生は「貯金はしたいけど、家賃と光熱費に加えて奨学金返済があるので、給料の手取りで果たして暮らしていけるのだろうか」と打ち明けました。私も、自分の収入だけで生活してみてはじめて、仕送りを捻出してくれた親の苦労を知りました。ここまで育ててくれた保護者への感謝を忘れないでほしいと思います。
 卒業式が終わると、大学は新入生の受け人れ準備が加速します。学生の入れ替わりは毎年のことですが、3月は寂寥感でいっぱいです。もう少しだけ、卒業したゼミ生たちの顔を思い浮かべながら思い出に浸りたいー。今は、そんな気持ちでいます。