熊本大学法学部は本年令和4年(2022年)4月1日に熊本大学法学部附属地域の法と公共政策教育研究センター(愛称「エルペルク」)を設置しました。法学部長はこのセンター長も兼務しています。ということで、センター業務としてもいろいろ挨拶することがあります。

先日、4月25日(月)には人吉農芸学院と、4月27日(水)には熊本労働局と、教育研究の共同遂行に関する連携協定の調印式を実施しました。ここでは、このときのわたしの挨拶をご紹介します。

人吉農芸学院との連携協定調印式(2022年4月25日)

【挨拶】

 人吉農芸学院様と本センターとの教育及び学術研究に係る連携協定の調印にあたり、熊本大学法学部及び附属センターを代表いたしまして、一言、ご挨拶いたします。

 本センターは、熊本大学法学部が「法(Law)」と「公共政策(Public policy)」に関する「教育(Education)」と「研究(Research)」を組織として実施する「拠点(Center)」なので、それぞれの文頭のアルファベットを並べて、愛称をLPERC(エルペルク)と名づけています。この4月1日に設置されたばかりのセンターで、本日の人吉農芸学院様との連携協定が、連携協定1件目ということになります。

 本センターは、熊本大学法学部が組織的に行っている教育研究について社会に還元するためにアーカイブ化することと、それをご覧になった社会の様々な方々に熊本大学法学部を利用していただく窓口になりたいという思いで設置いたしました。

 この度、熊大法学部として人吉農芸学院様の在院者の法教育や職員の方の研修等に継続的に関わっていく、また、人吉農芸学院様のご協力をいただき本学教員のまた学生諸君の学術研究を遂行するために、連携協定を締結できることは、本センター設置の1つの成果と考えております。

 本日は、人吉農芸学院様から院長の小柴様ほか皆様のご足労をいただき、こうして連携協定調印式を挙行できたこと、本センターにとって誠に喜ばしいことであります。御礼もうしあげます。この協定を基に、末永い教育学術交流ができたらと思います。よろしくお願いいたします。

 これをもちまして、わたしからの挨拶とさせていただきます。

【記者会見前の説明】

 記者会見に先立ちまして、わたしから、本センターについて簡単に説明させていただきます。

 まず、センター設置の目的は、熊本大学法学部が組織的に行ってきた、また、これから行っていく教育研究活動の成果を記録してアーカイブ化するためです。法学あるいは社会科学系の学問は、あまり組織・チームで実施していくものではありませんでした。ただ、社会の複雑化・多様化を受けて、1人の視点、1学問のアプローチで解決できる問題ばかりではなくなっております。そこで、これから一定の業務について、法学部が組織としてチームで実施していく象徴となるように、法学部に附属センターを設置しております。

 このセンターは、先ほど「エルペルク」との愛称をご紹介いたしましたが、このエルペルクは業務内容に応じて次の2つの部門をもっています。

 1つめは【地域紛争予防・解決部門】です。熊本は、ハンセン病問題、水俣病問題、川辺川ダム建設問題等、日本中の耳目を集めた大きな社会的課題を抱えた地です。また「赤ちゃんポスト」(内密出産)に関する問題、旧優生保護法に関する問題、外国人技能実習生に関する問題といった、日本中のどこでも生じ得る社会的課題も熊本で顕在化しています。地域紛争予防・解決部門は、熊本で生じている社会的課題について検討するための拠点となることを目指しております。

 2つめは【地域ガバナンス先導部門】です。熊本大学法学部は、高校生はもちろんのこと、国・地方自治体・専門職団体・地元企業等、多種多様なステークホルダーのためにあります。地域ガバナンス先導部門は、たとえば地方自治体の職員研修等への講師派遣、社会人へのリカレント教育の提供、地元団体・企業と連携しての問題解決等を実施するための拠点となることを目指しております。

 この2つの部門で実施される業務には、大きな特徴が2つあります。

 1つめは、いずれの部門における業務も、法学系教員はいままでも個別に、又は、組織的であったとしても散発的に実施してはきているものです。たとえば、熊本地震の後には自然災害から生じる社会科学的問題についてシンポジウムを開催し、それを日本評論社さんから刊行されている法学雑誌に特集記事として掲載してもらっています(これはすでにエルペルクのウエブサイトでご覧いただけます)。また、所属教員によるハンセン病等に関する法学的問題を扱った論文もあります。ただ、こうした研究がワンストップでまとまっている場所がないので、社会的に「見える化」されていません。そこで、本センターでは、いままでのこうした散発的な研究をワンストップでアクセスできる場所を提供することで、社会に熊本大学の法学系の成果を利用していただく場所となりたいと考えております。

 2つめの特徴は、いずれの部門における業務も、成果を教育に活かすことを主眼に置いている点です。法学系は現在、法学部、社文教の法学系専攻・JDP等の教育を担っておりますが、その各教育レベルでザ・熊大法学系と呼べるような科目・教育内容の確立を目指しています。ようするに学部から大学院まで一貫した教育内容に基づくいわば「縦串」となるような教育科目・内容を作りたいと考えておりますが、この教育内容を「地域紛争予防・解決部門」において作りたいと考えております。もう1つの部門の「地域ガバナンス先導部門」での業務は法学部で導入を検討している社会人を対象としたリカレント教育の内容になります。

 法学という学問は、ある意味、地域性のない、全国一律のものです。そういうわけで、全国のどこの法学部で教えられている内容もほぼ一律ということになります。それは法曹養成や公務員養成という意味では必要なことなのかもしれません。ただ、それでは、熊本大学法学部・大学院を選ぶ意味もとくにない、ということになります。このことは、このところの授業のオンライン化でさらに顕在化したことだと認識しております。このセンターは、熊本大学法学部・大学院で熊本大学独自の法学教育を実施するための拠点です。また、その成果を社会に還元する、熊本大学法学部を利用してもらうための窓口にもなりたいと考えております。

熊本労働局との連携協定調印式(2022年4月27日)

【挨拶】

 熊本労働局様と本センターとの教育及び学術研究に係る連携協定の調印にあたり、熊本大学法学部及び附属センターを代表いたしまして、一言、ご挨拶いたします。

 熊本大学法学部は、本日の連携協定に先立つ3月22日に、法学部の学生(具体的にはアドバンスト・リーダー・コースの地域公共人材クラスに所属する学生)の授業に講師を派遣していただくという協定を、熊本労働局様と締結させていただいております。

 本日は、この協定にくわえて、熊本労働局の職員研修について本センターの教員を派遣する、また逆に、本センターの教員の研究に熊本労働局のご協力をいただくという内容の連携協定を締結させていただきます。本日は、熊本労働局長の新田様ほか皆様のご足労をいただき、先日の教育協定にくわえて、職員・教員間の連携に関する協定の調印式を挙行できることは、熊本大学法学部にとって大変喜ばしいことであります。御礼申し上げます。この協定を基に、末永い教育学術交流ができたらと思います。よろしくお願いいたします。

 また、本センターは、熊本大学法学部が組織的に行っている教育研究について社会に還元するためにアーカイブ化することと、それをご覧になった社会の様々な方々に熊本大学法学部を利用していただく窓口になりたいという思いで設置いたしました。ただ、大学という組織は、こちら側の思いといたしましては「開かれている」組織体であると考えておりますが、外部の方から見ると必ずしもそうではない、敷居の高い組織であると見られているのかもそれません。これからは本センターを窓口に、法学部はもちろんですが、熊本大学内の他の組織をご紹介したり、本センターに関係している他の外部団体をご紹介するということもできると思いますので、お声がけいただければと思います。

 簡単ではございますが、これをもちまして、わたしからの挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。

【記者会見前の説明】

 まず、センター設置の目的は、熊本大学法学部が組織的に行ってきた、また、これから行っていく教育研究活動の成果を記録してアーカイブ化するためです。法学あるいは社会科学系の学問は、あまり組織・チームで実施していくものではありませんでした。ただ、社会の複雑化・多様化を受けて、1人の視点、1学問のアプローチで解決できる問題ばかりではなくなっております。そこで、これから一定の業務について、法学部が組織としてチームで実施していく象徴となるように、法学部に附属センターを設置しております。

 また、熊本大学は、全学をあげて、熊本・九州の中核大学としての役割を果たすよう業務を遂行しております。その中で法学部で教育研究している法学という学問は、ある意味、地域性のない、全国一律のものです。そういうわけで、全国のどこの法学部で教えられている内容もほぼ一律ということになります。それは法曹養成や公務員養成という意味では必要なことなのかもしれません。ただ、それでは、熊本大学法学部・大学院を選ぶ意味もとくにない、ということになります。このことは、このところの授業のオンライン化でさらに顕在化したことだと認識しております。このセンターは、熊本大学法学部・大学院で熊本大学独自の法学教育を実施するための拠点です。また、その成果を社会に還元する、熊本大学法学部を利用してもらうための窓口にもなりたいと考えております。

 熊本労働局様と本日こうして教育研究に関する連携協定を締結していただけたことで、熊本大学法学部が、同法学部にオリジナルな特徴ある教育研究を展開できる足場を得たと考えております。また、この連携に基づいて熊本労働局様に本センターがもつ人的資源・学術的資源を提供していくことで、熊本大学が熊本の地、九州の地にあることで果たすべき役割の一部を担えると考えております。

 さらに、熊本大学法学部の学生は、国家・地方を問わず、公務員を目指す学生が多くいます。その中には、九州内の労働局を志望する者もいます。また、労働を諸問題は、一般企業に就職する学生にとっても関心の高い事柄です。本協定に基づく各種の取り組みは、本学の学生にとってもよい効果をもたらす者と確信しております。

 本協定に基づく具体的な取り組みに関しては、これから双方でご相談させていただくことになりますが、近いうちに成果をご報告できればと考えております。

 わたしからは以上です。