くもりです。
最高裁判所は、18日と20日に「番組転送サーヴィス」について著作権法に違反するという判決を下しました。
「番組転送サーヴィス」というのは、日本で放送されているTV番組を海外に住んでいる人に転送するサーヴィスです。日本にある親機で受信した番組を転送し海外の子機で受信するというものですが、18日には親機で受信した番組をそのままリアルタイムで転送するサーヴィス(「まねきTV」の名称で知られている)について、「契約すれば誰でも利用できるサービスは、不特定多数への送信にあたる」(朝日新聞2011年1月19日)という理由で著作権法に違反するとされました。
また、20日には親機で受信し録画したものを(つまり複製したものを)転送するサーヴィス(「ロクラク」)について、著作権法で許された「私的使用」(著作権法30条)に該当しない、という判断が下されました。
日本の著作権法にはフェア・ユース規定(著作物の利用態様に照らして、当該利用が著作権者の利益を不当に侵害しないフェアなものなら著作物の無許諾利用が許されるとする法理論)がないので、このようなサーヴィスの適否は私的使用に該当するか否かで判定されます。この事案で「業者の関与が最も小さいとされるサービスも『私的使用』とは認められなかった」ことになります(朝日新聞2011年1月21日)。
もっとも、図書館の本の複製を図書館の人(ここでは業者にあたる)に頼むと法31条の規定が適用される(本の一部、論文集などなら一論文に限り複製できる)が、図書館から本を借り出して自分で複製する場合には30条が適用される、という解釈があります。したがって、きょうとりあげた番組転送サーヴィスもその主体が業者であるから30条が適用されないというのだから、この解釈と平仄があうようにも思います。
著作物のデジタル化が進みその複製・送信などの技術革新もあいまって、わたしたちが知的営為にふれることが手軽にできるようになりました。ただ、きょうの朝日新聞の《解説》には「二つの最高裁判決により、個人的に楽しむためでも、業者の手を借りてまで他人の著作物を利用することは厳しく制限されることいなるだろう」(21日の朝刊3面)とあります。デジタル化時代において、著作物の作者・権利者とそれを利用する者との利益のバランスについて、いまいちど考えてみる契機となる判決であると思います。
と偉そうに書きましたが、まだいずれの判例も確認していません。ふたつとも最高裁判所のHPにある「判例検索システム」でみられるので、興味のある方はご覧ください。