過去のコメントの紹介、第8弾は、集団的自衛権容認に転じる閣議決定がなされた後に取材を受けたものです。
記事は2014年7月18日の熊本日日新聞に掲載されています。写真つきです。
わたしのコメント
「閣議決定だけでは集団的自衛権の行使はできない。むしろ注視すべきは今後の法整備だ。仮に自衛隊の海外派遣に関し、閣議決定に沿った法律が制定されれば、憲法9条は骨抜きになる」。憲法学が専門の大日方信春・熊本大法学部教授(45)は指摘する。
大日方教授によると、現状の自衛隊は「一種の行政機関」だという。国会や内閣のように憲法上に位置付けられた組織とは異なり、自衛隊法で権限が決められ、それ以外の権限については国会が特別措置法をつくって権限を与えている。
「つまり、これまでの自衛隊は国会の統制下にあった。しかし、期間の定めのない法律で集団的自衛権の行使を認めてしまえば、その統制が効かなくなる」と危惧する。
法律には「規定がない、法が語っていない部分」があるという。憲法や9条を含め、その欠けた部分を政府見解や特別措置法などの法制定で埋めてきたのが、これまでの歴史だった。「ただ、もちろん、その政府見解や法律は憲法に違反していてはいけない」
では、憲法9条は何を禁止しているのか。9条は「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と明記。「自国への急迫した侵害がないにもかかわらず、他国への武力行使を容認する集団的自衛権の行使は、9条が禁じる武力行使にあたると言える。集団的自衛権が前提としている軍事同盟も禁止している」
集団的自衛権の行使容認を踏まえた安全保障関連の法整備について、政府は来春の統一地方選後の通常国会で一括審議する方向だ。 大日方教授は「それまでの間、国民はいろんなチャンネルを利用して自身の意見を表明すべきだ」と強調。その上で、「国の安全保障の在り方を大きく変える転換に対し、きちんと声を上げるのが主権者たる国民の役割であり義務だ」と話す。(楠本佳奈子)