法曹を育てる 『一筆』第6回 紙面画像

 

 大学法学部の役割の一つに、未来の法曹(裁判官・検察官・弁護士)を育てることがあります。司法制度改革で2004年度以降、その中核機関として熊本大をはじめ全国に74校の法科大学院が設立されました。
 司法試験による一発勝負ではなく、法科大学院で2~3年学ぶプロセスを通じて多様な人材を輩出することが理念でした。しかし、法科大学院を経ずに司法試験が受けられる「予備試験」ルートの存在や、学生の経済的な負担、修了者の司法試験合格率の伸び悩みもあって志願者は減り、熊本大は19年3月に法科大学院を廃止しました。とても残念ですが、15年間で修了者189人のうち61人が司法試験に合格してくれたことは、誇りに思っています。

 地方にありながら、引き続き法曹養成の一翼を担うために、熊本大は20年度、政府が導入した「法曹コース」を新設しました。1期生は16人。学部段階の法学教育を集中・効率化することで3年での卒業を可能にし、連携先などの法科大学院に進む仕組みです。熊本大は連携相手として九州大、神戸大、中央大、早稲田大と協定を結びました。九州大を除く3校の法科大学院には、熊本大生向けに「地域枠」も用意されており、有利な条件で受験できるようになりました。
 法曹になって法に基づく公平な社会を実現したいと志す若者は、少なくありません。熊本大は4大学との連携をてこに、九州の法曹養成の1拠点として学生に有益な学びの場を提供したいと考えています。