熊本日日新聞さんには、ゼミ活動を何度か取材・掲載していただいております。過去のわたしの「新聞等へのコメント」の番外編として、集団的自衛権の是非を議論した2015年6月24日の記事を振り返ってみます。

集団的自衛権は違憲?合憲 熊本大生は議論

 政府が国会会期を延長し、成立を目指す安全保障関連法案。「限定的な集団的自衛権は許される」という政府・与党に対し、憲法学者から「違憲」との声が相次いでいる。「砂川事件最高裁判決は合憲の根拠?」「集団的自衛権は固有の権利?」-。憲法を学ぶ熊本大3年の学生たちが23日、意見を交わした。

 大日方信春教授(46)のゼミ生15人がこの日、テーマにしたのは集団的自衛権と憲法。政府が合憲の根拠とする砂川事件の判例を「日米安保改定を間近に控え、米国から圧力がかかったのではないか」と分析するなど4人が発表し、議論の口火を切った。

 「政府は砂川判決をねじ曲げている。合憲の根拠とするのは論理的じゃない」と小柳裕希さん(20)。大日方教授は最高裁判決が、安保条約改定1カ月前の1959年12月に下されたことに触れ、「憲法について考える際は、時代背景を知ることも大事」とアドバイスした。

 ゼミ生は自衛権について議論を深めた。個別的自衛権を「憲法以前に存在する固有の権利」と認めつつ、集団的自衛権は「固有のもの」でなく法令で禁じることができると定義し、「武力行使を禁じた9条違反」との見方を示した。<P>

 一方で高瀬大丞[だいすけ]さん(21)は「東アジア情勢が緊張する中、日本は平和ぼけしている」。政府が武力行使の厳格な歯止めとする新3要件を提示し、「順守されれば限定的な集団的自衛権は違憲じゃない」と主張すると、賛同の声も上がった。

 しかし、手嶋優梨子さん(20)が目を向けたのは、9条の理念や基地問題に翻弄[ほんろう]される沖縄の人々。「『現実』に合わせていけばきりがない。ずるずると戦争しやすい道に進んでいるようで反対」と言い切った。

 安保法制の国会審議で、あらためて注目される憲法。大日方教授は市民の活発な議論も期待し、「これを機に憲法を自分の問題として捉え、9条について考えてほしい」と訴えた。(福井一基)

熊本日日新聞2015年6月24日