拙稿「サタイアあるいはウエポン型のパロディと表現の自由」を掲載いただいた高倉成男先生・木下昌彦先生・金子敏哉先生の編集による『知的財産法制と憲法的価値』(有斐閣)が出版されました。
パロディ(実は確立した定義はないようですが)は、原作品それ自体を直接批判・諷刺する目的をもつ「ターゲット型のパロディ」と原作品を対象とするのではなく市井の風習や因習を批判するためになされる「ウエポン型のパロディ」に、一般的にはわけることができます。このうち前者の「ターゲット型」のものは、フェア・ユースや引用該当性を肯定することで、著作権侵害を免責する法理論があります(但し、わが国の最高裁判例はパロディという表現手法による著作権侵害免責を認めていないと思います)。
ところで、後者の「ウエポン型」のものは、著作物のフェア・ユースを認めているアメリカ法でも一般的には認められていないと思われます。また、わが国でも引用該当性を肯定する議論は見受けられません。ということで、拙稿では、ウエポン型のパロディが表現の自由論により認められるか否か、他人の著作物を用いての諷刺(サタイア)の自由を認める法理論について検討してみました。
パロディと表現の自由に関する検討は、指導教員の古稀記念論文集である松井茂記・長谷部恭男・渡辺康行の三先生の編集による『自由の法理』(成文堂、2015年)に掲載していただいた「著作物のパロディと表現の自由 -- 憲法学の視点から」に続いて2本目です。引き続き勉強して、サタイアとか冒涜といった表現カテゴリに属する表現をめぐる法理論を書いてみたいと思います。