過去のコメントを紹介する企画の第6弾は、人気漫画の海賊版サイトによる被害を伝えた日本経済新聞2021年12月5日に掲載してもらったものを紹介します。

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海賊版サイト、半年で閲覧20億件 被害額は正規市場超え: 日本経済新聞

人気漫画をただ読みできる海賊版サイトの拡大が止まらない。大手10サイトのアクセス数は半年間で20億件を超え、被害が深刻だった「漫画村」の3倍超だ。被害額も正規市場を…

わたしのコメント

インターネット上の海賊版の閲覧を「ブロッキング(接続遮断)」という方法で防止することについて、わたしは

「通信の秘密の侵害にはあたらず、抑止効果も高い」

とコメントしています。

まず、いいわけとして、この記事には「著作権に詳しい」とありますが、いやいや、著作権法はまぁ、素人です。何冊かの基本書を読んだり、とくに表現の自由と関係ありそうな論文を読んだり書いたりしてるだけです。わたし、こう見えても憲法学者なので。これ、あちこちで一応は強調しているのですが、だいたいは無視されます。

つぎに、ブロッキングについて「抑止効果も高い」とコメントしているのは迂闊ですね(というか、ホントにそう言っただろうか?)。海賊版の出現について「抑止効果」があるかないかというのは、法解釈ではないですからね。わたし、法学者でしかないので、ここはよくわかりません。ただ、諸外国ではブロッキングの導入によって海賊版が減ってはいるようです。

サイトブロッキング問題とわたし

そもそもなぜわたしが「海賊版サイトブロッキングと憲法(表現の自由、通信の秘密、プライバシー保護)」の問題に関わり始めたかですが、それは、ある先生のご紹介をいただいて内閣府の知的財産戦略本部でヒアリングを受けたことにあります。ときは2018(平成30)年の12月初旬、それは知財本部が表明した行政指導としてのブロッキング(同年4月30日に表明)に憲法学界・情報法学界・実務界から批判が投げかけられていた最中のことでした。

わたしはとくにブロッキング推進派でもなく、またもちろんこうした政策の策定に関与しているような大物ではないわけですが、直観的に、憲法に反しない方法でのブロッキングはあるのではないか、と素朴に考えてそういった方向性の意見をお伝えしました。

この件、どこかからお聞きになられた権利者団体の方からいろいろな機会をいただき、その後、さまざまな機会に「海賊版サイトブロッキングの憲法適合性」の問題についてお話しさせていただいてきました。そのうち YouTube でご覧いただけるものを2つ掲載しておきます。

1つめは2020年11月4日に開催された第10回MPAセミナーにおける「海賊版サイト・ブロッキングの憲法適合性」についての講演です。これはサイトブロッキングと表現の自由についてお話しています(27分13秒あたりから登場します)。

2つめは2021年11月4日に開催された第11回MPAセミナーにおける「サイトブロッキング法制化におけるプライバシー権と通信の秘密」と題する講演です(1時間27分01秒あたりから登場します)。

ところで、よく「憲法学界の中で先生の意見に賛同される方は他にいませんか?」と聞かれます。いないんですよね。ということは、間違っている?

そう、これ、ホントに不安です。「著作権と表現の自由」を考え始めた頃もそうだったのですが(もとはといえば、憲法学でロールズを扱った時もそうだったかも)、なんせ、ほかにあんまり考えている人がいなかった。自分がやっていること「あっているのか?」「あさっての方向ではないか?」と常に(今でも)不安です。ただ、間違っていたとしても、読んだ人が「これは間違っているから別の議論をしよう」と思ってみらえるだけでも学界に貢献できたと思えばよいように思います。そう考えて、いつも思い切って書いています。

もっとも、そんなに影響力ある学者ではないので、きっと誰も気づかないと思えば、大丈夫か。指導教員にいわれた言葉に「自分が気にしているほど人は覚えていない」という名言があります。そうですよね。