大学の地域貢献 『一筆』第9回 紙面画像

 

 大学には、さまざまな形での地域貢献が求められています。その―つは、地域のシンクタンク機能でしょう。大学の研究者は、自治体などの審議会で他の有識者と同様、専門的な立場から意見を求められます。

 例えば、県と熊本市の新型コロナウイルス対策専門家会議の座長は、熊本大の原田信志学長です。私も県の行政不服審査会や熊本市の建築審査会、特定空家等借置審議会などで委員を務めています。
 研究による地域貢献もあります。熊本地震の際には、熊本大法学部は「熊本地震が提起する法的・政策的課題」と題するシンポジウムを開き、その後、法学雑誌に「熊本地震と法律学の役割」と題した論文を連載しました。
 ただ、何と言っても大学にとって重要な役割は、地域を支える人材の育成だと考えます。熊本大法学部は2018年度のカリキュラム改正で「地域公共人材クラス」という教育課程を開設しました。「将来、古里に貢献したい」という意欲のある高校生を推薦入試で迎え入れ、大学で地域課題の解決策を見いだすカを身に付けてもらうことが狙いです。この課程の学生には、県内の自治体や企業へのインターンシップで優先枠もあります。
 熊本大法学部の学生は、もともと公務員志向が強く、卒業生の4割程度が毎年、国家公務員や地方公務員になっています。こうした土壌を踏まえつつ、地域公共人材クラスでは、人口減少や少子高齢化に直面した熊本の未来を担う、核となる人材を育てたいと思っています。