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 天皇の代替わりに伴って平成が間もなく終わり、5月に新しい元号に変わりますね。そこで今回は、「天皇と憲法」を取り上げたいと思います。

 日本国憲法は1条で、天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定しました。さらに4条1項で天皇の国政関与を否定しています。
 このことから天皇は、世襲により単独で統治権の大半を握る「君主」でも、外国との関係で国家を法的に代表する「元首」でもないことになります。天皇が君主であり、元首でもあった明治憲法と統治の形態が大きく違うのは、敗戦を機に制定された現憲法が、象徴である天皇に「政治からの中立」を求めているからなのです。
 では、現憲法で天皇のどんな行為が許されているのでしょうか。まず、6、7条の国事行為。国会の指名に基づいた首相の任命や法律の公布などが列挙され、天皇の象徴性を利用して行為自体に重みを持たせる機能があると解釈されています。
 次に基本的人権です。意外に思われるかもしれませんが、天皇も一人の人間であり、私人としての表現の自由や信教の自由、財産権といった権利が保障されていると考えられています。ただ、これらの行為も政治的な影響を持たない範囲でしか保障されません。
 婚姻に皇室会議の承認が必要なのも財産の授受に国会の議決が必要なのも、古くから皇族の結婚や財産が時の権力者に政治利用されてきた歴史を踏まえたものと言えそうです。
 そして、最後が「象徴としての行為」。国会の開会や終戦記念日などの式典で述べられる「お言葉」や三大行幸啓をはじめとした「ご公務」が、これに当たります。現天皇は、熊本地農などの被災地や離島の訪問、海外への戦没者慰霊の旅など精力的に活動され、その回数は昭和天皇と比べて格段に増えました。
 ただ、象徴の定義や「ご公務」については憲法に規定がなく、何がどこまで許されるのかは研究者の間で見解が分かれています。「国事行為と密接に関連するものに限定される」との考え方があるのに対し、「公人として何らかの行為をすることは憲法が当然予期している」という反論もあります。政治的中立の点で、外国要人との”皇室外交”を疑問視する研究者もいます。
 戦争、災害、いわれなき差別…。天皇や皇室は「ご公務」を通して、常に社会問題に気持ちを寄せてこられました。その行為が当事者を癒やすものであることは確かです。ただ、こうした社会問題は、政府や国民こそが主体的に関わらなければならないことでもあります。
 憲法下における天皇制の機能とは何か。改元は、国民にとって「象徴」のあるべき姿を考える良い機会ではないでしょうか。