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 憲法43条1項は、国会が「全国民を代表する」議員で組織されなければならない、としています。そう表現されたのは、なぜでしょう?

 中世・近世の身分制議会は貴族や聖職者、有産階級の代表で組織され、議員は国王に対する特権階級の利益を守る存在でした。このため、近代議会は「国民全体の利益を考えて自由に議論すること」を理念に掲げました。
 「全国民を代表」とは、国会議員が選挙区(有権者)からの命令に縛られない存在であるという意味です。全国民の視点に立って活動し、結果的に選挙区の意向に沿わなかったとしても、地方議員のようにリコールで解職できない法的効果があるのです。
 日本の国会は二院制(42条)を採用し、独立して自律した二つの審議体で構成されています。両院は同格で、法律制定権や国政調査権などの重要な権限に差はありません。各院の決定が異なった時には、法案の議決(59条2項)や内閣総理大臣の指名(67条2項)などで「衆院の優越」が規定されています。
 英国や米国も二院制です。日本が両院とも「選挙された議員」なのに対し、英国の貴族院(上院)は一部に世襲が残り、議会の決定は庶民院(下院)が優越しています。
 米国は、予算を含む全ての法案審議で上院と下院の権限が同じです。上院定数は各州2人。連邦制のため、上院議員は各州の外交官として州の権益を守る役割を兼ねています。日本とは権限や選出方法が随分違いますね。
 ところで、自民党は改憲条文案に「参院の合区解消」を盛り込みました。都道府県単位の選挙区を維持して選出議員に事実上、地域代表の性質を持たせる内容で、他の憲法規範との矛盾が指摘されています。43条1項との整合性をはじめ、「1票の格差」を巡る近年の司法判断の流れにも逆行しかねません。
 多様な意見を慎重に議論して国の統治に反映させるには、立法権の中にも権力分立が必要ー。二院制本来の意義や機能が、日本で生かされていないとの指摘があります。「衆院のカーボンコピー」と椰楡されるように、比例代表制の導入で参院でも政党色が強まりました。
 改憲を議論するなら、参院議員の選び方といった小手先の対応にとどまらず、本質的な二院制の在り方や地方自治との関係についても腰を据えて考えるべきでしょう。